鈴木英二 回顧展
 
 
 
 
 −出会い三たび その心のおもむくままに−
 
  79年の生涯は、ひたすら画だけを描き続けた印象が強い鈴木英二ですが、
自分の好奇心を触発したいろいろなものをヒントに、ささやかな知的冒険を楽しんだ一生でもありました。
 まるで憑かれたように新しい場で、次から次へと作品を生み出していたかと思うと、
アッという間に消えていったそれから、、、。多分彼はその新しい世界が自分の本質に重なるかどうかを
直感的にチェックをしていたように思います。しかし、これもまた彼自身、、、。
今回は画とともに残されたたくさんの「いろいろ」も展示することにしました。
どうぞ、楽しんでお出かけ下さい。 
 
(鈴木瑞子 記) 
 
「鈴木英二 回顧展」
油絵、水墨、書、軸、陶板、等々と木版画(鈴木瑞子作)  
 

・会期  2010年5月10日(月) ~ 2010年5月16日(日)
・入場料 無料
・開催時間 11:00 ~ 18:00 (最終日は17:00)
・会場  千駄ヶ谷ギャラリー(松井建築研究所1階)

 
 
 
 −「鈴木英二 回顧展」を開催するにあたって−
 
私達の活動拠点でもあります、橘学苑ー創作館、音楽堂のきっかけとなりましたのが、
祖母から見せてもらった鈴木英二先生の絵画集でした。
画集からは、とても力強い印象を受けていました。先生に初めてお会いしましたのが、
25年前先生のご自宅を訪れた時で、穏やかで飄々としたお人柄に接し、
初対面ながら、打ち解けて楽しくお話ができたのを覚えています。
先生は25年の間神奈川県鶴見市にあります橘学苑の教師をなさり、1970年には
中・高の校長に、そして1974年には幼稚園を創立され園長に就任されました。
そのユニークで生き生きとした教育方針は今でも多くの人達に語り継がれ、
現在の橘学苑の教育基本法新ともなっています。
1979年にすでに退職されていた先生より、「今、橘では創作館と音楽堂の建設を
計画している。何か良いアドバイスをいただけないか?」というお話をいただき、
3ヶ月間程先生方からなる建設委員会で勉強会のようなものをさせていただきました。
それが現実の仕事になろうとは、、、、
無我夢中だったあの2年間(設計に1年、施工に1年)、建築活動の中で起こりうる全て
(楽しい事も辛い事も)を勉強し体験しました。設計の際常に私たちの頭にあったのが、
鈴木英二先生の教育方針(著「自己を拓く学校」)である「自己発見−自立への道」でした。
その器を作るべく悪戦苦闘の毎日でした。
1987年8月無事二つの建物は完成しました。
 
→ 創作館 音楽堂
 
その後、自宅兼事務所を千駄ヶ谷に建設し、翌年1999年9月に初のギャラリーとして
展示してくださったのが、鈴木英二先生と奥様の瑞子先生の「二人展」でした。
ということで今回は2回目となりますが、回顧展になろうとは、、、
 
絵画その他の作品を通して鈴木英二、その人に是非会いにいらして下さい。
心よりお待ちしております。
 
千駄ヶ谷ギャラリー
松井 英子
 
 
 
鈴木英二・略歴
 
1927 東京都大森に生まれる
1939 東京府立六中(現在新宿高校)
1943 海軍兵学校(75期)。岩国・江田島で厳しい訓練の日々を送る
1945 卒業直前日本敗戦。兵学校閉鎖。自宅に戻る
    この頃から油絵を自己流で描き始める
    同時にこれからの自分の生きる方向を悩みながら考える
 
1946 美術学校(現芸大)の願書を求めるが、結局出願はせず、
    早稲田大学文学部に入学。心理学を専攻する
1949 早稲田大学卒業
1950 誠文堂を退社。カリキュラム時代に知り合った画家、油野誠一氏の
    紹介で横浜・橘学苑の教師となる。結婚
    1959年頃からガリ判刷りの「思案と体験」をずっと書き続ける
1970 橘学苑、中・高の校長に就任
1974 橘幼稚園創立。園長に就任
1979 校長、園長全て辞任
    ただの人として生きながら、絵を描き、興味あるものは何でも試し、
    生きたい所へ旅に出る生活が始まる
1982 横浜有隣堂のギャラリー ユーリンファボリーで初めての油絵個展
    (それまで描きためたもの150点近く並べる)
1983 運転免許取得。目的は自分の画を車に積み、日本国中どこへでも出かけ、
    「出前個展」をする為だった
1982-2002 この間ざっと数える限りで50回を越す個展を開いた。画廊から
       画廊への口コミで続いたり、自分がやりたいと思った時は自宅でも
       随分開いた。遠くは札幌、青森、七戸などから、小田原、伊香保、
       掛川、三島、京都など晩年にとった運転免許は大いに役立った
1993 NHK教育テレビで「心の時代・自分を探す旅から」が放映される
    この時期、油絵も制作したが、墨絵・山水画・書・篆刻など沢山の
    作品を生み出した
    60歳になる前に、念願の初単独でギリシャ、インドを旅行した
    至福の旅であったろう
2003 少しずつ体に変調が始まる
    4月に最後の個展を自宅で開く。それまでの作品をほしいという人に
    どんどん買ってもらうという趣旨で開き、大勢の方達が来て下さった
    作者である鈴木英二は病室で横になりながら、客の応対をしていた
    一生最後に彼が自分をすべて並べた記念すべき日々になった
2006 病いのため永眠。享年79歳
               −鈴木英二の世界 追悼文集と油絵の中から−
 
 
 
主な著書
 
私たちの教育探求     1974
自己を拓く学校      1978
自分の中の自分(画文集)   1982
北条(写真集)        1983
心の絵日記(画文集)     1986
自分自身への旅−橘学苑での思案と体験− 1992
わが山頭火−書と絵と文−  1994